いよいよ12月、トリミングサロンやペットホテルにとって一年で最も忙しいシーズンの到来です。 ご予約が満杯になり、長時間わんちゃん・ねこちゃんをお預かりする機会が増えるこの時期。スタッフ全員で改めて共有していただきたいのが、冬の**「お預かり環境」におけるリスク管理**です。
特に注意が必要なのが、暖房による「乾燥」と、それに伴う「隠れ脱水」です。
1. トリミングサロンやホテルで起きる「冬の脱水」
「脱水症状」は夏の熱中症のイメージが強いですが、冬の室内環境こそ警戒が必要です。 特にトリミングサロンやペットホテルでは、以下の要因が重なります。
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強力な暖房とドライヤー熱: 業務用の空調やドライヤーの使用により、店舗内は想像以上に乾燥し、湿度が低下します(不感蒸泄の増加)。
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緊張による飲水拒否: 慣れない場所でのお預かりによる緊張から、水を飲まなくなる子がいます。
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長時間のお預かり: 年末は混雑するため、施術前後の待機時間(ケージでのお預かり時間)が通常より長くなりがちです。
これらが重なり、「涼しい顔をしていても、体の中はカラカラ」という危険な状態に陥りやすいのです。
2. スタッフと共有すべき「数字」の怖さ
命を守るプロとして、以下の数字を現場で意識してください。
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致死ライン: 体内の水分の10%~15%**を失うと、死に至る危険性が極めて高くなります。
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死亡率のリスク: 重度の脱水症状に陥り、発見や処置が遅れた場合の死亡率は約50%に達するというデータもあります。
「お預かり中に水を飲んでいない」ことは、決して軽視できることではありません。
3. 事故を防ぐ「室温・湿度」の設定目安
安全にお返しするための環境設定の目安です。
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室温:20℃~23℃
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人が動いて「暖かい」と感じる温度は、ケージ内でじっとしている犬猫には暑すぎる、あるいは逆に寒すぎる場合があります。個体差に合わせて調整してください。
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湿度:50%~60%
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最も重要です。 乾燥はウイルス感染のリスクも高めます。加湿器の活用はもちろん、濡れタオルを干すなどして湿度50%以上を維持してください。
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4. 現場ですぐできる3つの対策アクション
今日から店舗で実施できる対策です。
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「飲水量」の数値管理 「減っている気がする」という感覚に頼らず、「◯◯ml入れた水が、◯◯ml残った」と数値で記録してください。
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お預かり中の積極的な給水 トリミングの合間やホテルのフリータイムに、スポイトを使ったり、味付きのスープ(飼い主様の許可を得て)を与えたりして、水分摂取を促してください。
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皮膚チェック(ツルゴールテスト)の実施 お預かり中、定期的に首の後ろの皮膚を軽くつまんでください。皮膚がすぐに戻らない場合は、脱水のサインです。
5. まとめ:プロとして「安全」をお返しするために
お客様は、きれいになった姿や元気な姿でお家に帰ることを信じて、私たちに大切なお子様を預けてくださいます。 年末年始の繁忙期こそ、技術だけでなく「温度・湿度・水分」という基本の管理を徹底しましょう。
日本ペット事業者支援協会では、トリミングサロンやペットホテル運営における万が一の事故に備えた「ペット事業者賠償責任保険」で、皆様の安心安全な運営をサポートしています。 事故を未然に防ぐプロの意識で、この年末を無事に乗り切りましょう。
