その休憩、法律上は「休憩」じゃないかもしれません
トリミングサロンやペットホテルの現場は、常に予測不能なことが起きます。 「ちょっと手が空いた隙にご飯を食べて!」 「電話が鳴ったら出てね」 そんな指示を出していませんか?
実は、「電話番をしながら」「犬の様子を見ながら」の食事は、労働基準法上の「休憩」とは認められません。 今回は、経営者が知っておくべき「休憩時間のルール」と、限られたテナントスペースでいかにスタッフを休ませるか、その環境づくりについて解説します。
1. 労働基準法が定める「休憩の3原則」
法律では、休憩について以下の3つが定められています。
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途中付与の原則: 労働時間の「途中」に与えること。
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一斉付与の原則: 一斉に与えること(※ただし、ペット業などの接客業は労使協定があれば交代制でOK)。
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自由利用の原則: ここが最重要です。 労働から離れ、自由に利用させなければなりません。
つまり、「いつでも対応できるように待機している状態(手待時間)」は労働時間であり、休憩ではないのです。 後からスタッフに「あれは休憩じゃなかった」と訴えられた場合、過去に遡って残業代を支払うリスクがあります。
2. なぜ「物理的な休憩室(スペース)」が必要なのか?
「自由利用」を保証するためには、物理的に業務から切り離された空間が必要です。 特にペット事業ならではの理由があります。
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「音」からの解放: トリミング室はドライヤーの音や犬の鳴き声で溢れています。聴覚的な休息がないと、脳が休まりません。
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「毛」からの解放: 衛生面でも、毛が舞う場所での食事は推奨されません。
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事故防止のリセット効果: 前回の記事でも触れましたが、集中力が切れた時の「慣れ」や「ミス」が事故を招きます。完全に仕事から離れる1時間が、午後の集中力を復活させます。
3. 狭い店舗でもできる!休憩スペース確保のポイント
「うちは狭いから休憩室なんて作れない」 そう諦める前に、以下の工夫を検討してみてください。
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パーティションやカーテンで視界を遮る バックヤードの一角でも、厚手のカーテンで仕切り、「ここから先は休憩中」という結界を作ります。視覚的に犬が見えないだけでも効果があります。
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「外出」を許可・推奨する 店内にスペースがない場合、近くのカフェや公園、車内での休憩を認め、「店にいなくていい(呼び出されない)」という安心感を与えます。
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事務スペースとの兼用は見直す PCや電話がある場所での食事は、どうしても仕事をしてしまいがちです。可能であれば、休憩専用の椅子を一つ置くだけでも意識が変わります。
4. 経営者として「休む勇気」を持たせる
設備以上に大切なのが、経営者や店長の空気作りです。 スタッフが休憩に入ったら、 「今は休憩中だから、私が対応するよ」 「電話は取らなくていいから、ゆっくりして」 と声をかけ、強制的に業務から切り離してあげることが、スタッフを守り、ひいては会社を守ることにつながります。
5. まとめ:良い仕事は、良い休息から
休憩室の整備は、単なる福利厚生ではなく、「労働法違反のリスク回避」であり「事故防止のための安全投資」です。
日本ペット事業者支援協会では、事故対応だけでなく、こうした「労務管理」に関するご相談も受け付けています。 スタッフが長く、元気に働ける環境を一緒に作っていきましょう。
