「ペット=物」という法律の現実。既往症(もともとの病気・ケガ)による事故でお店の責任はどこまで問われるのか?

お預かりしたバッグが「最初から壊れていた」としたら?ペットの持病・高齢死と、サロン・ホテルの法的責任範囲について。


感情は「家族」。でも法律は「物」。

私たちペット事業者にとって、お客様のわんちゃん・ねこちゃんは「大切な家族」であり、命ある存在です。

しかし、万が一の事故やトラブルが起き、いざ裁判や法的な話し合いになった時、日本の法律(民法)がペットをどう定義しているかご存知でしょうか?

残念ながら悲しい話しではありますが、法律上、ペットは「動産(=物)」として扱われます。

少し冷たく聞こえるかもしれませんが、この「物」という定義を理解しておくことが、不当なクレームからお店を守る最大の盾になります。

 

1. 「お預かりした高級バッグ」で考えてみる

分かりやすい例え話をしましょう。

あなたがホテルで、お客様から「高級なバッグ」をお預かりしたとします。

もし、そのバッグの持ち手が、お預かりする前からちぎれそうになっていた(劣化していた)としたらどうでしょう? そして、保管中に自然に持ち手が切れてしまった場合、それはホテルの管理ミスでしょうか?

答えは「NO」です。

それは「経年劣化」や「初期不良」であり、保管者の責任ではありません。

ペットも同様に、「お預かり以前からあった病気(既往症)やケガ」が悪化したり、それが原因で亡くなったりした場合、原則としてお店側に法的責任(損害賠償義務)は発生しません。

 

 

2. 法的キーワードは「瑕疵(かし)」

法律用語では、この「もともとのキズや欠陥」のことを「瑕疵(かし)」と呼びます。

  • 心臓疾患があった

  • 関節が弱っていた(パテラなど)

  • 皮膚に炎症があった

これらは全て、お預かりする「物(生体)」にもともと存在していた「瑕疵」です。 この「瑕疵」が原因で起きたトラブルについて、お店は責任を負う必要はないのです。

(※ただし、その病気を知っていて、わざと悪化させるような無理な扱いをした場合は別です)

 

 

3. 最大の問題は「証明できるか」どうか

しかし、ここからが実務の怖いところです。

「最初から壊れていた(病気だった)」とお店側が主張しても、お客様が

「預ける時は元気だった!お店で変なことをしたんだろう!」と言われたら。

「預かる前から壊れていた」という証拠がない限り、プロであるお店側の管理不足(善管注意義務違反)を疑われてしまいます。

つまり、「お預かり時の検品(健康チェック)」をしていないということは、「傷のない新品のバッグを預かりました」と認めたことと同義になってしまうのです。

 

 

4. 身を守るための「カウンセリング」の徹底を

「既往症による免責」を主張するために、今日からできる対策は3つです。

  1. 入念なカウンセリング(受入検査) 「最近、足を引きずっていませんか?」「心臓のお薬は飲んでいませんか?」としっかり確認してください。

  2. 身体チェックの記録化 お預かり直後にお客様の目の前で体を触り、イボ、傷、歩き方をチェックし、記録用紙に記入してもらいます。

  3. 免責同意書の具体化 「持病(心臓病・てんかん等)の悪化や、高齢による自然死については責任を負いません」という一文を明確に入れます。

 

5. まとめ:法律を知ることは、優しさでもある

「ペットは物」という考え方は、心情的には受け入れがたいものです。 しかし、この理屈を知っていれば、「うちのミスではない」と冷静に判断でき、不当な要求に怯えることなく堂々と対応できます。

日本ペット事業者支援協会では、こうした法的な知識の共有や、万が一訴えられた時のための弁護士費用特約付きの保険などで、事業者の皆様をバックアップしています。 感情論ではなく、論理と法律で、あなたのお店を守りましょう。