「誓約書があるから安心」という危険な勘違い
トリミングサロンやペットホテルにお預かりする際、多くのお店が「万が一、死亡やケガがあっても当店は一切の責任を負いません」といった内容の誓約書(免責同意書)にサインをもらっているかと思います。
「サインをもらっているから、もし老犬をお預かりして急変しても賠償責任は問われない」 もしそう思っているならその認識には少し注意が必要です。
いざ事故が起きて裁判になった時、その誓約書は「ただの紙切れ」になる可能性が・・・。
なぜ「誓約書」は法的に無効になるのか?
現在の日本の法律(消費者契約法第8条など)では、「事業者の損害賠償責任を完全に(一切)免除する条項は無効とする」と定められています。
つまり、お店側に少しでも過失(見守り不足、判断の遅れ、設備の問題など)があったとみなされた場合、「誓約書にサインしたじゃないか!」という主張は裁判所では通用しません。 サインがあるからといって、お店が負うべき「善良な管理者としての注意義務」が消滅するわけではないのです。
「ケアサービス(老犬・持病)」に潜む爆発的なリスク
近年、高齢化するペットに向けた「ドッグラン併設のケアサービス」や「老犬ホーム的なお預かり」の需要が高まっています。志の高い素晴らしいサービスである一方、経営的なリスクは通常のお預かりの比ではありません。
健康な子であれば起こり得ない「突然の体調急変」「発作」「そのまま亡くなってしまう」という事態が、日常茶飯事で起こり得るのがケアサービスです。
そして、その急変が「寿命や病気によるもの」なのか、それとも「お店の管理不足(過失)によるもの」なのか、後から証明するのは極めて困難であり、泥沼のトラブル(高額賠償)に発展しやすいのが現実です。
当協会が「ケアサービス主体」の加盟をお断りする明確な理由
日本ペット事業者支援協会では、入会審査において「ケアサービスが主体であり、かつ同一建物内でトリミング等の通常業務が混在している運営形態」の事業者様のご加盟につきましては、大変厳しい基準を設けさせていただいております。
理由は非常にシンプルです。 当協会の団体包括保険は、あくまで「通常のトリミングやペットホテル業務中」の突発的な事故をカバーするものです。もし、リスクの異なるケアサービスと通常業務が同じ施設内で混在していると、万が一事故が起きた際、「それが保険対象外であるケアサービス中の事故なのか、あるいは対象となる通常業務中の事故なのか」という客観的な線引きが完全に不可能になってしまいます。
「お客様から誓約書をもらっているから大丈夫」とお考えの方もいらっしゃいますが、先に触れた通り、いざという時にその誓約書でお店を守り切れるとは限りません。さらに、当協会の付帯保険は「店舗(施設)ごとのご加盟」を前提としているため、同一建物内でサービスごとに区切って保険を適用させることが実務上極めて困難なのです。
因果関係が曖昧な状態で保険請求を行うことは、引受保険会社の査定において重大なトラブルを引き起こします。結果として、それが「ルールを守って安全に運営してくださっている他の会員様全員の保険制度」を根底から揺るがす事態に直結してしまうため、こうした厳格な基準を設けさせていただいております。
曖昧な境界線がお店を滅ぼす
「なんでも預かります」「誓約書をもらっているから大丈夫」。 その曖昧な境界線とリスク管理の甘さが、最終的にお店の信用を落とし、大切な経営を立ち行かなくさせます。
私たちは、すべての会員様が安心して日々の「安全な事業」に専念できるよう、あえて厳格な審査基準と明確なルールを敷いています。
加盟のハードルを下げ、のべつ幕なしに受け入れること自体は簡単です。しかし、実際に事故が起きた際、肝心の付帯保険が適用されなければ全くの本末転倒です。 事実、「他で事故を起こしたが保険対象外と言われた」「支払いを断られた」という悲痛なご相談から、当協会へご加盟されるケースが近年増え続けています。
これから開業される皆様も、「ご自身が提供するサービスの本当のリスク」と「誓約書の法的な限界」を正しく理解し、万全の防衛策(実態に合った保険と運用ルール)を構築してくださいね。
